2005年7月8日

ひさしぶりに、歌劇祭がひらかれている、バイエルン国立歌劇場へ行きました。ドイツ人がおしゃれをしている姿は、日常生活では滅多に見られませんが、オペラやコンサートの鑑賞は、彼らがおめかしをする数少ない場です。実際、ロングドレスの女性や蝶ネクタイの男性など、ふだんは見られない服を着ている人が沢山います。

演目はドニツェッティの英国を舞台にした悲劇「Robert Devereux」。エリザベス女王はエディタ・グルベローバの正にはまり役で、その圧倒的な声量による熱唱に、観客から盛んに「ブラバー」の声が飛んでいました。ベテランらしく、すごい貫禄です。エリザベス女王が、狂乱状態になる場面では、なんとかつらまで外してしまう、熱演ぶり。

ただし演出は、現代の企業を思わせるような設定で、メッセンジャーがジャージを着ていたり、家臣たちが背広を着ていたりと、宮廷の華やかな舞台衣装を期待する人には、失望の種でしょう。もっとも、コスト削減の必要が叫ばれるおり、こうした現代風の演出は、衣装代の節約になるという副次効果があるのかもしれません。

また、以前はなかったことですが、ミュンヘンにある世界最大の再保険会社が、この演目のスポンサーになっていました。また、以前はオペラの切符を買うと、劇場へ行くために、ミュンヘンのバスや地下鉄に無料で乗れたのですが、そうしたサービスも廃止され、かわりに切符の裏には、高級老人ホームの広告が載っていました。

それにしてもバイエルン国立歌劇場は、戦後の再建とはいえ、立派な建物で圧倒されます。数時間ですが、非日常的な雰囲気に浸ることができます。東京で6月に歌舞伎座に行きましたが、やはり比較になりませんね。歌舞伎座では、修学旅行の高校生が、上演中に無駄話をしていて、気分がそがれました。なぜ引率の先生は、生徒を叱らないのでしょうか。ドイツならば、見知らぬ人からでも、すぐに叱責の声が飛んできます。